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                                          J・Hair News Vol.12 / J・Hair’s EYE

初期対応の重要性改めて確認を 決め手になる自主基準の遵守
〜優先したいガイドラインの実践〜

 今年は商品をめぐる悲惨な事故や契約をめぐる深刻な消費者被害が多発しました。多くの企業は消費者の信頼を回復させるため社内体制をもう一度見直そうと危機管理システムの再構築に着手しました。消費者対応をおろそかにすると企業の存続すら危うくなることは4年前の「雪印乳業」の解散例を見るまでも明らかです。商品事故による事後チェックが「製品」だけでなく「役務」の分野にまで拡大・強化されようとしている中、今年の教訓は重大です。

 
◎初期対応の重要性、今一度確認を

 昨年から今年にかけて、その後の行政対応を転換させるほどの商品事故が相次ぎ発覚しました。社会問題になったものとしては、FF式石油温風機事故、エレベーター事故、プール事故、ガス瞬間湯沸器事故、シュレッダー事故などです。このほかにもパソコン搭載のリチウム電池の発火事故、浴室暖房機による火災事故など数え上げればきりがありません。世界的な回収となったリチウム電池では、リコール費用が最低でも700億円に上ることが推測されています。

 
いずれの事故例も発覚するまでの企業対応が問題となりました。初期の段階できちんと対処していれば、その後の死亡事故や重傷事故、拡大事故が防げた例ばかりだからです。初期対応をおろそかにすると、後に莫大なツケが回ってくる、この点をいまさらながら突きつけたのが特徴です。

  この「ツケ」の中で最も重要なのは言うまでもなく「消費者の信頼消失」です。長年積み重ねてきた自社ブランド商品の信頼は、1件の事故による1件のずさんな消費者対応にとって水泡に帰してしまいます。死亡・重傷などの人損や、死亡・延焼などの物損が伴うことから対応が遅れるほど補償もこじれ、単なる契約問題とは異なる莫大な額に達します。だからこそ初期対応を今一度確認することが必要です。いくつかの例を見てみましょう。

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◎発覚してからの対応では遅過ぎる

  事故対応として行政施策に大きな影響を与えたのが昨年のFF式石油温風機死亡事故です。この製品に対しては初めて法律に基づいて「事故の拡大防止」へ向けた「緊急命令」が出されるなど、厳しい措置がとられました。当該メーカーは全ての広告を中止し、危険性を知らせる「謹告社告」を流しました。製品事故の防止と回収を呼びかけたテレビCMが話題を呼びましたが、暖房シーズンを迎え、全戸へのチラシ配布など回収活動は現在も続けられています。

  この事例の大きな特徴は、死亡事故という重大事故が発生した後も当該メーカーは当初、拡大防止へ向けた対応をとらなかったことです。公表したのはそれから何件かの重症事故発生後のことでした。しかし、そのときの対応も全社的でなかったことから、以降も再び事故が発生、遂に経済産業省が初の「緊急命令」を出す事態となったのです。企業自身による事故情報の収集・公開・回収・修理体制の整備が何よりも必要なことを示しています。初期の段階で危機管理体制の重要性を確認していればその後の事故は防ぎ得たのではないか、と指摘されています。
 
  ガス瞬間湯沸器による事故も同様です。この製品については判明するだけで28件の一酸化炭素中毒事故が発生し、21人の方が亡くなっていました。しかし、メーカーが経済産業省に報告していたのはそのうちの2件の事故のみで、他のほとんどの事故については公表もされませんでした。結局、先のFF式石油温風機と同様、当該メーカーに対しても「緊急命令」が発動され、現在、点検・回収が取り組まれています。

 この事例では、長い期間にわたり事故が相次いでいたのに、メーカー側が「機器の不正改造が原因」として、消費者に十分な周知をせず、積極的な回収や修理を実施しないまま、被害を拡大させていたことがわかりました。後に、不正改造ではなく、品質劣化か原因の事故も発生していたことが判明し、当該メーカーは訂正と謝罪に追われることになります。経済産業省へ提出した報告書にも不十分さが目立ち、結局、二度にわたり報告書提出を命じられ、事故発覚後の対応に問題があることもわかりました。その過程で明らかになったのは、事故を重大視せず、会社的な対応を実施してこなかった当該メーカーの消費者対応です。
 消費者との個別対応であっても、きちんとその教訓を社内へフィードバックし、必要に応じて社内体制を強化することが求められたのに、それをしてこなかったことが問題視されたのです。結局、経済産業省は当該製品を「欠陥」と判断、事故の拡大防止へ向け回収・点検活動を監視していくことにしましたが、この企業ブランドへの消費者の信頼は地に墜ちたと言えます。

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◎予想外使用でも問われる企業責任

 もう一つ、重視すべき製品事故が発生しました。シュレッダーによって幼児の指が切断された事故です。今年の3月と7月に相次いで発生していたことが発覚し、行政機関が調べたところ、子どもの事故だけではなく、大人も事故にあっていたことがわかりました。社会問題になったのは指を9本も切断するなど、幼児の事故内容があまりに悲惨だったことにあります。

 ほとんどのシュレッダーには子どもに使用させることを禁止する注意表示が付いています。そのため当初メーカーは「消費者の誤使用」としてシュレッダーには何の問題もない、と表明していました。注意表示を見なかった消費者の不注意、親の責任というわけです。

 しかし、子どもの使用には「誤使用」という概念は当てはまりません。どんなにメーカーが注意を呼びかけても子どもにとっての興味対象は大人と異なります。しかも、後に事故の発生が相次いでいることが判明し、業界内でも誤使用の発生が予想されていたことがわかりました。「予想された誤使用」となると、もはや「想定内の事故」となります。そうなると、それを防止する措置をとらなかったメーカー責任は免れません。結局、この事例も一つ一つの事故にどのように対応したのか、企業責任が問われることになりました。事態を重視した経済産業省は、シュレッダーの技術基準改定を決定し、幼児の指がシュレッダーの紙投入口に入らないよう、改善させることを検討しています。

 今年は回収費用が数百億円にも上る製品事故も発生しました。ノート型パソコンに搭載されたリチウムイオン電池の欠陥問題です。この電池は各メーカーのノート型パソコンに使用されていました。現在もそのまま使われている製品も多いはずです。その電池から発煙・発火するという報告が世界から次々と寄せられ、消費者の不安感が高まりました。日本で製造された当該電池の中に、微量な金属粒が混入していたことが原因です。

 消費者の不安をかきたてたのは、この電池が汎用品として各社パソコンメーカーの製品に幅広く使用されていたことでした。その中には発煙・発火に至らないパソコンもあることから、電池だけが問題なのか、パソコンのシステムにも問題があるのか、企業によって判断が分かれ、消費者には明確な情報が伝えられませんでした。

 結局、消費者の不安感を取り除き、信頼を回復する措置として、電池メーカーが全ての当該電池を回収することを決定しました。次いで、各パソコンメーカーがその回収に協力する形で、事故が起きていないパソコンであっても当該電池を搭載しているものならバッテリーを交換することを決定しました。その結果、回収対象電池数は世界で960万個という膨大な数に上ることになりました。

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◎再確認したいコンプライアンス
 以上のように、製品事故は何よりも消費者の信頼を確保するための初期対応の重要性を浮きぼりにしています。一連の事故を重視した行政は、被害防止へ向けた新しい施策導入の契機としました。一つが製品事故が発生したときは行政機関に報告させることをメーカーに義務付ける法律の制定です。また、製品事故だけでなく、エステティックサービスでの重大な皮膚障害など、「役務」の事故についても行政機関が集中的に把握するシステムを構築することが検討されるようになりました。契約トラブルだけではなく、事故トラブル全般に関する情報収集体制の構築です。

 すべての業界・企業には、消費者の信頼確保を目指した対応策が求められます。法令の枠を越えた自主基準の遵守など、コンプライアンスの強化です。事後チェック機能が強化されようとしている中、今後一層、当協会のガイドラインの重要性を確認していきましょう。

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